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【IoT導入どうすれば?】社内デジタル化の第一歩を「教育」でもっとスムーズにする
2021年02月18日 更新
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自動車ホイールの製造ラインで圧倒的な国内シェアを有する渡辺鉄工(福岡市博多区)。IoTを駆使して製造現場の効率化を進めているかと思いきや、少し違った観点で社内のデジタル化やIoTに向き合っています。キーワードは「教育」です。
――明治19年(1886年)創業。老舗メーカーという言葉がぴったりですね。
戦前までは航空機などの兵器製造が中心でした。終戦後、工業製品の製造ラインの設計、製作を主要事業としています。
弊社が製造する鋼板処理設備(スリッターライン)は、「コイル」と呼ばれるロール状の鋼板を任意の幅にカットする大型の設備です。カットされた鋼板は自動車のボディーやフレームなどの素材になります。鉄だけでなく、銅やアルミなどの非鉄金属も多いですね。
スリッターラインのノウハウを生かし、主力事業となっているのが、自動車ホイールの生産設備の設計、製造です。
国内シェアは90%以上で、米国、韓国、台湾、インドネシアなどにも輸出しています。
社内デジタル化に向けた「教育」
――IoTはそれらを製造するラインの効率化に役立てているのですね。
いえ、違います。当初は製造現場でIoTを活用できないかと検討しました。しかし、IoTを活用するアイデアがそもそも現場から出てきませんでした。デジタル化の基礎的な知識不足、現場にどういった課題があるのかの共有も図れていませんでした。課題が分からなければ、明確なゴールを設定できません。多くの中小・零細企業にIoTが浸透しないのは、私たちも直面した「課題の整理整頓」と「課題達成のゴール」が明確になっていないからだと感じています。
――渡辺鉄工は製造業でありながら、IoTを導入するための「教育」に、まず目を向けたのですね。
そうです。My-IoTプロジェクトと連携して、IoT導入に向けた教育プログラムを作成しています。
例えば、手書き資料をデジタル化するだけであっても、中小・零細企業にとっては「手書きの方が早いよ」と、及び腰になってしまうケースは多いようです。IoTを実装するためには、デジタル化された「データ」が必要になります。弊社もそうでしたが、アナログだったものをデジタルに置き換えていく必要性を従業員の理解してもらうことが大変です。
――どういった教育プログラムですか。
最初に座学で「IoTとは何か」という簡単な解説をします。その後、自分たちの職場で困っている課題に気付いてもらう作業です。自分たちの課題を知ってもらうことが重要です。課題の解決策を検討するなかでIoTが有効となれば、IoTによる解決策を一緒に考えます。
業務見つめ直し新たな価値発見
――製造業の業務とは畑違いですね。
そうでもありません。弊社の製造設備を導入いただく場合、お客様のニーズを入念に聞き取る必要があります。営業活動の一環としてサービスで行っていますが、課題の異なる個々のお客様のニーズに合わせて最適化させる「コンサルティング業務」が弊社の強みではないかと考えるに到りました。IoTの教育プログラムは、製造業の業務からかけ離れているよう感じるかも知れませんが、社会のニーズを捉えた新しいビジネスの芽ではないかと感じています。
課題発見の教育プログラムを通じて、弊社の設備を導入、活用していただければ、「コンサルティング」としては成功だと考えています。
――今後の展開を教えてください。
製造現場では、団塊世代の大量退職によって技術の継承という大きな課題に直面しています。IoTを活用した教育プログラムを発展させることで、日本の製造業が抱える技術継承の課題解決にも活用できないかと考えています。
教育プログラムが今後発展することで、デジタル化やIT化、IoT化がさらに浸透し、これまで職人の経験や勘でカバーされていた分野が、数値化・保存され、IoTを通じて「いつでも、どこでも、誰もが」利用できると理想ですね。
My-IoTがどれだけ便利なプラットフォームであっても、たくさんの企業・個人に知ってもらい、使ってもらわないと普及しません。私たちも直面したデジタル化の壁を「教育プラグラム」というかたちで共有することで、デジタル化、IoT導入へと導くお手伝いをしていきたいです。